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「二輪車のススメ」番外編-前編-

「二輪車のススメ」番外編-前編-

ストライダージャパン代表の岡島です。
先日雑誌FQ JAPANさんの企画で、ホンダモーターサイクルジャパン広報の根本さん、MTBダウンヒル元日本チャンピオンの井手川選手との対談に参加させていただきました。
テーマは「二輪車のススメ」。その中で「日本でストライダーの販売をスタートさせたきっかけは?」という質問を受けまして、お話させていただいたのですが、掲載記事の中ではすべてカットされていましたので、そのあたりの話も含め自分でコラムにすることにしました!

テーマは引き続き「二輪車のススメ」。

ということで、まず己のことを振り返ってみますと、自分自身かれこれ32年間オートバイに乗り続けています。ただ、移動手段として乗っているわけではありません。単に、乗ることが楽しいから乗り続けています。ここ何年かは随分とその機会も減ってしまいましたが、それでもたまに深夜にふと思いたち、夜の街をビュビューンと風を切って走っていると、「ああ、バイクって気持ちいいなぁ」としみじみ感じます。自転車にはほぼ毎日乗っています。こちらは楽しいから乗っているのではなく移動手段として便利だから。かれこれ10年間、往復10kmの距離を自転車通勤していますが、よほどの荒天ではない限り電車通勤はしません。改めて考えてみると「便利だから」というだけではない何か別の理由があるのかもしれませんが。

そんな僕が幼児にとっての二輪車『ストライダー』に、初めて出会ったのは今から10年前、長男が2歳になったばかりの頃でした――― 

ストライダーとの出会い

 長男2歳の誕生日。まず僕が買い与えたのは三輪車でした。それは僕の予想と期待とは裏腹に、長男にとっては中々ハードルが高い乗り物でした。まずペダルがこげない。歩いて乗ることはできても、今度は曲がれない。「曲がるときはハンドルを切るんだ」と教えても、2歳児には理解できるわけもなく、しまいには癇癪を起してギャン泣き。挙句の果てには曲がりたい方向に無理やり体重移動をした結果、斜め前方に顔面から転倒…。結局それからというもの、三輪車には二度と乗ってくれようとしませんでした。

 しかし、そのころ長男はあまり外で遊ぶことが好きでなかったこともあり、何とか乗用玩具で遊ばせたいと思っていた僕は、いろいろ調べた結果、当時アメリカで『ストライダー』というヘンテコな乗り物が発売されたことを知ります。「2歳児に二輪車が乗れるわけないじゃん」と思いつつ、試しに一台個人輸入をしてみることにしました。

 その数日後、長男は恐る恐るそのヘンテコな乗り物にまたがります。「乗れている」と表現するには程遠い感じですが、立ったままヨチヨチと進む姿が異様に可愛い!ヘタに口出しして癇癪を起されても困るので、口出しはせず、ただ見守るだけに徹していました。翌日も、その翌日も自らストライダーに乗った長男。「しめしめ」と思いながら観察していると、いくつかの点に気が付きました。
 三輪車では思うように曲がることもできませんでしたが、ちゃんと曲がれてる!曲がりたい方向に視線を向け無意識に体重移動をするだけで、ハンドルが追従し車体がバンクし曲がっていく。オートバイや自転車、二輪車の特性と同じ原理で自然と曲がっていきます。

三輪車や補助輪付に乗せるから自転車に乗れなくなる

  実は、 二輪車と三輪車(補助輪付き自転車も同様)、その操作特性は大きく違うどころか、全く正反対の操作特性を持っています。まず、三輪車や補助輪付き自転車は車体を傾けることができないため、ハンドルを意図的に切って曲がるしかありません 。一方、二輪車で曲がる場合、ハンドルは曲がりたい方向に切るのではありません(というか、そもそもハンドル操作で曲がる乗り物ではありません)。バイクにしても自転車にしても二輪車はあくまで体重移動で曲がる乗り物です。体重移動によって車体が右側に傾くと、ハンドルは一瞬逆方向の左に切れた後(逆走舵)、セルフセテア(車体が傾いた方向にハンドルが切れる現象)によって曲がってきます。

  少し難しい話になりましたが、実際このセルフステアを無視して意図的にハンドルを操作してしまうと二輪車はどうなるか?試しに自転車に乗っている時、体重移動をせずハンドルを曲がりたい方向に切ってみてください。すると、自転車は自分が曲がりたい方向とは逆方向に曲がっていくことになります。 三輪車と二輪車同じ乗り物といえど操作が異なる乗り物ですから、スムーズに乗れるわけがありません。そして、これこそが三輪車や補助輪付きに乗り慣れた子どもが自転車に乗れなくなってしまう一番の要因です。

転ぶことは悪いことではない

 更に、ストライダーで転んだとき。三輪車の時と同じようにギャン泣きするかと思いきや、まったく動じることもなく、また自分で車体を起こして乗り出し驚かせました。「三輪車で転んだときにはあれほど泣いたのに、なぜ?」と不思議でなりませんでしたが、何度か転ぶ様子をみているうちに。それがどういうことなのか、徐々に分かってきました。

 三輪車は転びにくい構造になっている分、転ぶ時は「斜め前に転ぶ」など意図できない方向に転びます。その点ストライダーの転び方は自然。転ぶ瞬間に「転ぶ」ということを察知できているようでした。察知できるから、転んでも驚かない。ところが、三輪車の場合は転んだとき何が起こったのか理解できない。つまり、長男が三輪車で転んだ際泣いていた理由は、痛かったから以上に、ビックリして泣いていたんだろうと思います。

 あまり積極的に体を動かして遊ぶことが好きではなかった長男が、自らストライダーに乗っている楽しんでいる姿をみて、僕はふと思うようになってきました。

「これはもしかして、画期的に凄い乗り物ではないか!?」
それが、確信に変わったのは、それから数日後のことでした。

後編へ続く…


岡島 和嗣
ストライダージャパン代表(株式会社Ampus代表取締役)
二児の父。自身の子どもにストライダーを買い与えたのをきっかけにストライダージャパンを設立。ストライダーを日本に広め、幼児の外遊びを激変させた。根っからのバイク好き。