戦う相手は、自分だ。
静まり返った”げんかいの森”に集まった、60名の勇者たち。
その戦いの記録を、ここに残します。
STRIDER14x ADVENTURE CROSSとは?
4~6歳を対象とする、ストライダー史上最も過酷なレース。ペダルを装着できる14インチストライダー(14x)を使い、全長およそ2キロにおよぶ障害物のある冒険的コースをランニングとストライダー14xのランニングバイクモード、ペダルバイクモードで走行するレース。
STRIDER14x ADVENTURE CROSS 特設サイトより
まず最初に・・・
集まった選手たちが受付を終えて行うのは、コースインスペクションと呼ばれるコースのチェック。
選手とクルー1名(※ランニングからバイクモードに切り替わる際、選手にペダルを装着できる14インチストライダー(以下、14x)を渡す保護者のこと)でスタート前に実際に走るコースをチェックすることができます。
勇者たちを待ち構える過酷なコース
コースの全長は約2.5km。
①ランニング約400m
②ランニングバイクモード約1015m
③ペダルバイクモード約1015m
こうして文字と数字だけで書くと、「ふ〜ん、そうなんだ〜」と思われる方もいるかもしれません。けれど実際のコースを歩いてみると想像以上に厳しいものであることがわかります。
スタートからゴールまでは傾斜となっていて、ほぼ山道のようになっているのです。地図上の一番上となっているところが登りのピークで、そこから下り坂に変わります。歩くだけでも息が上がるような道です。
でも自転車ならば下り坂は楽々では?と思えなくもないのですが、そこは「ストライダー史上最も過酷なレース」。
そうはいかないのです。
自転車モードに切り替えてすぐ現れる「丸太越え」、連なるコブのあるポイント、急な下り坂、急カーブ、滑りやすい路面と幾重にも試練が降り掛かります。
まずスタートからピット(ランニングからバイクに切り替わる際に14xを受け取る場所)までを400m走り、ストライダー14xを受け取った子どもたちは、ランニングバイクモード(ペダルなし)で次のコースへ向かいます。
そしてまたピットに戻ってくると、今度はクルーにペダルをつけてもらい、ペダルバイクモードでまた先ほどと同じコースに戻っていくのです。
「レディー、セット、ゴー!」の掛け声とともにスタートしたらコース内に入れるのは子どもたちとスタッフだけ。
ピット内にいるクルーも、会場まで応援に来てくれた方たちも、決してコース内に入ることはできないのです。
どんなに辛くても、コケても、どんどん他な子たちから引き離されて行っても、泣いても、そこにいるのは自分だけ。
自分のちからだけで子どもたちはゴールを目指します。
開始前は子どもらしさ全開
コースインスペクション(走るコースのチェック)を終え戻ってきた子どもたちは、早速ピットで自転車を準備するお父さんと話したり、走り回ったりして和やかムード。
ブリーフィングという大会前の注意事項説明や、ストライダージャパン代表からの挨拶が行われると真剣に聞き入るような場面も。
MCの井手川直樹さんが「今日のコースはしっかり見れましたか?簡単だと思った人ー?」と手を挙げると、
「はーーーい!」と大きな声で答える姿も。
現場では大人たちからの驚きが混じった笑い声が響いていました。
いよいよスタート
大会開始の時間が迫り、続々とスタート地点に集まる子どもたち。
開始時刻までは残り15分。
待ちきれず「早くスタートしてよー!」とおどける子もいれば、少し緊張の面持ちとなる子も。
応援に駆けつけたお父さんお母さんはスタート前でカメラを持ち、今か今かとその瞬間を待っていました。
会場内の空気が一変した瞬間でした。
「レディー、セット、ゴー!」
の掛け声と共に、まずは6才クラスの選手たちが一斉に走り出します。
少しの間をおいて5才クラスの選手、そして最後は4才クラスの選手です。
年齢差はありますが、みんな同じコースを走ります。
先ほどまでお父さんお母さんと話していた時の瞳は確かに子どものそれであったのに、走り出した瞬間の眼は全く違うものになっていました。
開始早々上り坂が選手たちを待ち構えます。
滑りやすい斜面に足を取られてコケてしまう場面も。
普通子どもはコケたら泣いたり、親に抱っこを求めたりするものです。もちろんその場で泣いている子も、うずくまっている子もいました。
けれど、このレースに出ている子はみんな、何があってもお父さんお母さんがコースには入れないことを知っています。
辛いと思ったその瞬間、誰も助けにはきてくれないことを知っている。その時、頭の中に浮かぶのは誰の姿だろうと考えました。
ピットで14xを準備して待ってくれているお父さんの顔、ゴールで待っているお母さんの顔、もしかすると、これまで勝つために練習してきた自分自身の顔ではないかと思ったのです。
人は、何のために頑張るのか。
もちろん、「誰かのため」というのはとてつもないエネルギーになります。
けれど、「自分のため」「あの日の自分を裏切らないため」というのもまた、強い原動力の一つになるのではないかと感じました。
ほとんどの子がまた立ち上がり、泣きながらもまた進み始める姿を見て、きっと自分のために走ったこの日のことを忘れないでほしいと思うと同時に、その姿を私はずっと覚えているだろうと思いました。
自分のために頑張ったことが巡って誰かの力になる。
そんなことは微塵も思っていないだろう選手たちの姿が眩しかったです。
ランニングを終え、14xを受け取った先に・・・
しばらくすると、山を降りピットに姿を現した選手たち。
ストライダー14xを受け取り、まず最初に待ち構えるのは「丸太越え」。
ここは唯一お父さんお母さんの姿が見える場所ですが、ここでも助けを求めたり甘えたりする様子は見られず、みんな真剣に目の前の丸太を越えていました。
丸太を越えた後は自転車のコースへ。
まずはペダルなしのランニングバイクモードでコースを走ります。
足で地面を力強く蹴り、急斜面も登っていきます。
やっと登り切ったと思ったら、次に待ち構えるのは大きなコブが連なる道。
登っては下り、登っては下りを繰り返します。
そうして抜けた先には急カーブの下り坂が・・・。
下り坂はいかに早く、斜面に足を取られることなく下っていくか・・・というのがポイントになります。
しかも下った先に更に道は続き、やっとピットに戻ってきたら息を着く間も無くクルーにペダルを付けてもらい今度はペダルバイクモードでもう一度同じ道へ。
ついに勝敗が決まる!レース終盤
今度は地面を蹴って進むのではなく、ペダルを漕いで進む選手たち。
急斜面がまたしても待ち受けています。
一度走った道を、もう一度行くのはもう知っているから楽と捉えるか、一度超えたものをもう一度か・・・と捉えるかでかなり景色が変わって見えることでしょう。
そしてその道を越えた先に、やっとゴールが待っています。
もちろん、レースなので順位があり、勝敗もあります。けれどこの過酷な道を進むとき、まず一番に戦ったのは自分自身だったと思うのです。「もうダメかもしれない・・・」「辛い」「苦しい」そう思う自分と戦い、戦い抜いた全ての選手に、ゴールでは心からの拍手が送られていました。
レースを終えて
大会終了後は表彰式。
1位〜3位までの選手にはトロフィーが贈られます。
「げんかいの森」に挑戦したことは、子どもたちにとって思い出のひとつに過ぎないのかもしれません。
けれど「自分と戦った」この日のことは、大人になってもずっと彼ら、彼女らの心の中に残り続けてくれるのではないかと思いました。
げんかいの森に挑戦してくれた60名の勇者の皆さん。本当にお疲れ様でした。とっても、かっこよかったです。